ご家族に消化器の病気がある方へ|家族歴から考える検査と受診の目安
「父親が大腸がんになった」「母親に胃がんの既往がある」「兄弟が大腸ポリープを切除している」など、ご家族の病歴をきっかけに、ご自身も検査を受けたほうがよいのか気になっている方もいらっしゃると思います。
家族歴とは、両親や兄弟姉妹、祖父母など血縁関係のあるご家族が、これまでにどのような病気にかかったかという情報です。
消化器の病気には、生活習慣や感染症などさまざまな要因が関係しますが、大腸がんをはじめ、家族歴が発症リスクを考えるうえで参考になる病気もあります。
ただし、「家族が病気になった=自分も同じ病気になる」という意味ではありません。 一方で、ご家族に大腸がんや胃がんなどの既往がある場合には、ご自身の年齢や症状、これまでの検査歴などを踏まえて、胃カメラや大腸カメラなどの検査を考えるきっかけになります。
当院では、ご家族の病歴についても確認しながら、一人ひとりに必要な検査をご提案しています。
目次
- 消化器診療で確認しておきたい「家族歴」とは
- 大腸がんの家族歴がある方
- 大腸ポリープの家族歴がある方
- 胃がんの家族歴がある方
- 炎症性腸疾患などの家族歴がある方
- 肝臓病の家族歴がある方
- 膵臓がんなど、その他の家族歴が気になる方
- 家族歴がある方で、このような症状がある場合はご相談ください
- 家族歴に応じて検討する検査
- 当院での家族歴を踏まえた診療について
- 家族歴についてよくある質問
- 親が大腸がんでした。自分も大腸カメラを受けたほうがよいですか?
- 家族に胃がんがいます。ピロリ菌検査を受けたほうがよいですか?
- 祖父母ががんでした。これも家族歴になりますか?
- 家族が若くして大腸がんになっています。注意したほうがよいですか?
- 家族歴があっても症状がなければ検査は必要ありませんか?
消化器診療で確認しておきたい「家族歴」とは
家族歴といっても、確認したい病気はひとつではありません。
消化器内科では、胃がん、大腸がん、大腸ポリープ、肝臓病など、ご家族にどのような病気があったのかを確認することがあります。
また、「誰が病気になったのか」「何歳ごろに診断されたのか」も大切な情報です。
| ご家族の病歴 | ご自身で確認を検討したいこと |
|---|---|
| 大腸がん | 大腸カメラを受けたことがあるか、便通に変化がないか |
| 大腸ポリープ | ご自身にもポリープがないか、過去の大腸カメラ歴 |
| 胃がん | 胃カメラ歴、ピロリ菌感染・除菌歴 |
| 胃・十二指腸潰瘍 | ピロリ菌感染の有無や胃の症状 |
| 炎症性腸疾患 | 長引く下痢、血便、腹痛などがないか |
| 肝臓病 | 肝機能検査の結果や肝炎ウイルス検査歴など |
| 膵臓がん・膵臓病 | ご家族の発症状況やご自身の症状など |
特に、親や兄弟姉妹など近い血縁者の病歴は、診察時にお伝えいただきたい情報のひとつです。
また、同じ病気になったご家族が複数いる場合や、比較的若い年齢でがんを発症したご家族がいる場合には、そのこともお伝えください。
「詳しい病名が分からない」という場合でも、分かる範囲で構いません。
大腸がんの家族歴がある方
消化器診療のなかでも、特に確認しておきたい家族歴のひとつが大腸がんです。
親・兄弟姉妹・子どもなどの近い血縁者に大腸がんになった方がいる場合には、そうでない方と比べて大腸がんのリスクが高くなることが知られています。
そのため、ご家族に大腸がんの既往がある方は、自覚症状がなくても大腸の検査歴を確認しておくことが大切です。
特に次のような場合には、ご自身の検査について一度ご相談ください。
| 家族歴・ご自身の状態 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 親が大腸がんになった | ご自身の大腸カメラ歴を確認します |
| 兄弟姉妹に大腸がんの既往がある | 年齢や発症時期なども参考にします |
| 大腸がんになった家族が複数いる | 家族内での発症状況を詳しく確認します |
| 若い年齢で大腸がんになった家族がいる | 遺伝的な要因も含めて検討する場合があります |
| 便潜血検査が陽性だった | 家族歴の有無にかかわらず精密検査が必要です |
| 血便・細い便・便通変化がある | 大腸カメラによる確認を検討します |
大腸がんは、早期には自覚症状がないことも少なくありません。
血便がない、便通も普通という理由だけで、大腸に病変がないとは判断できません。
家族歴が気になっている方で、これまで一度も大腸カメラを受けたことがない場合にはご相談ください。
大腸ポリープの家族歴がある方
「父親が大腸ポリープを何度も切除している」「兄弟が大腸カメラでポリープを指摘された」というケースもあります。
大腸ポリープにはいくつかの種類があり、すべてが将来大腸がんになるわけではありません。
一方で、大腸がんの多くは腺腫と呼ばれるタイプの大腸ポリープを経て発生すると考えられているため、ポリープを早い段階で見つけることには意味があります。
ご家族に大腸ポリープの既往があるからといって、ご自身にも必ずポリープができるわけではありませんが、便潜血検査の結果や年齢、これまでの検査歴などを踏まえて大腸カメラを検討します。
当院では、大腸カメラ検査中に切除可能なポリープが見つかった場合には、状態に応じてその場で日帰り切除を行うことが可能です。
胃がんの家族歴がある方
ご家族に胃がんになった方がいる場合には、ご自身の胃の状態について心配される方も多いと思います。
胃がんにはさまざまな要因が関係しますが、そのなかでも重要なのがピロリ菌感染です。
ピロリ菌は家庭内で感染することもあるため、ご家族に胃がんやピロリ菌感染歴がある場合には、ご自身の感染状況を一度確認することも大切です。
| 確認したいこと | ポイント |
|---|---|
| 胃カメラを受けたことがあるか | 胃粘膜の状態を直接確認できます |
| ピロリ菌検査を受けたことがあるか | 感染の有無を確認します |
| ピロリ菌を除菌したことがあるか | 除菌後も胃の状態に応じて経過観察が必要です |
| 慢性胃炎・萎縮性胃炎を指摘されたことがあるか | 胃粘膜の状態を確認します |
| 胃痛や胃もたれなどがないか | 症状がある場合には胃カメラを検討します |
胃がんも早期には症状がないことがあります。
そのため、「胃が痛くないから検査は必要ない」とは限りません。
ご家族に胃がんの既往があり、これまで胃カメラやピロリ菌検査を受けたことがない方は一度ご相談ください。
炎症性腸疾患などの家族歴がある方
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患についても、ご家族の病歴を確認することがあります。
これらの病気は、遺伝だけで発症するものではなく、環境因子や免疫反応など複数の要因が関係すると考えられています。
そのため、家族に潰瘍性大腸炎やクローン病の方がいるだけで、症状のない方全員に大腸カメラが必要というわけではありません。
一方で、ご家族に炎症性腸疾患があり、ご自身にも次のような症状が続いている場合にはご相談ください。
| 気になる症状 | 確認する理由 |
|---|---|
| 下痢が長く続く | 腸に慢性的な炎症がないか確認します |
| 血便が繰り返し出る | 大腸粘膜の炎症などを確認します |
| 粘液の混じった便が出る | 炎症性腸疾患などでもみられることがあります |
| 腹痛を繰り返す | 腸の炎症やその他の病気について確認します |
| 体重が減っている | 慢性的な消化器疾患がないか確認します |
特に、長引く下痢と血便がある場合には、家族歴の有無にかかわらず大腸の検査を検討します。
症状がある場合には「家族と同じ病気かもしれない」と自己判断せず、一度診察を受けてください。
肝臓病の家族歴がある方
肝臓の病気についても、家族歴が参考になることがあります。
たとえば、B型肝炎では母子感染や家族内での感染がみられることがあり、肝臓がんの背景には慢性肝炎や肝硬変などが関係することがあります。
また、脂肪肝や生活習慣病については、遺伝的な体質だけでなく、ご家族で似た食生活や生活習慣を送っていることが影響する場合もあります。
ご家族に肝臓病があり、健康診断で肝機能異常を指摘されている場合などには、一度ご相談ください。
| ご家族の病歴・ご自身の状態 | 確認したいこと |
|---|---|
| B型肝炎の家族がいる | ご自身の肝炎ウイルス検査歴などを確認します |
| 肝硬変・肝臓がんの家族がいる | 背景となった肝疾患なども確認します |
| 脂肪肝の家族が多い | ご自身の体重や肝機能、生活習慣などを確認します |
| 健診で肝機能異常がある | 血液検査や腹部超音波検査などを検討します |
家族歴があることだけで肝臓病と判断することはできませんが、ご自身の検査結果とあわせて考えることが重要です。
膵臓がんなど、その他の家族歴が気になる方
「親が膵臓がんだった」「家族に消化器がんが何人もいる」というご相談もあります。
膵臓がんでは、血縁者に膵臓がんの方がいることがリスクを考えるうえで参考になる場合があります。
また、特定のがんが家族内に集中している場合には、まれに遺伝性の腫瘍症候群が関係していることもあります。
たとえば、大腸がんや子宮体がんなどが家族内で複数みられる場合にはリンチ症候群、大腸ポリープが非常に多い家系では家族性大腸腺腫症などが知られています。
ただし、家族にがん患者さんが複数いるからといって、必ず遺伝性の病気というわけではありません。
気になる家族歴がある場合には、次のような情報が分かる範囲であると診療の参考になります。
| 確認しておきたい家族歴 | 内容 |
| 誰が病気になったか | 父母、兄弟姉妹、祖父母など |
| どの病気だったか | 大腸がん、胃がん、膵臓がんなど |
| 何歳ごろ発症したか | 比較的若い年齢での発症かどうか |
| 同じ病気の方が何人いるか | 家族内で複数人が発症しているか |
| 複数種類のがんがあるか | 家族内にどのようながんがあるか |
分からない項目があっても問題ありません。
分かる範囲の情報をもとに、必要な検査や専門医への相談が必要かどうかを考えていきます。
家族歴がある方で、このような症状がある場合はご相談ください
家族歴だけでは病気の有無を判断できませんが、そこにご自身の症状が加わっている場合には、検査を考える重要なきっかけになります。
- 血便・下血がある
- 便潜血検査で陽性を指摘された
- 便が以前より細くなった
- 便秘や下痢など便通の変化が続いている
- 胃痛や胃もたれが続いている
- 黒い便が出る
- 食欲が落ちている
- 原因不明の体重減少がある
- 貧血を指摘されている
- 肝機能異常を指摘されている
特に、大腸がんの家族歴があり血便や便通変化がある場合、胃がんの家族歴があり胃の症状や黒い便がある場合には、早めにご相談ください。
また、便潜血陽性など、それ自体が精密検査の対象となる結果については、家族歴がなくても検査が必要です。
家族歴はあくまで判断材料のひとつです。症状や健康診断の結果を含めて総合的に考えます。
家族歴に応じて検討する検査
ご家族の病気によって、検討する検査は異なります。
「家族歴があるから、胃カメラも大腸カメラもすべて受けなければいけない」ということではありません。
ご家族の病歴、ご自身の年齢や症状、健康診断の結果、これまでの検査歴に応じて必要な検査を選ぶことが大切です。
| 家族歴・状況 | 検討する主な検査 |
|---|---|
| 大腸がん・大腸ポリープ | 大腸カメラ検査 |
| 胃がん | 胃カメラ検査、ピロリ菌検査 |
| 胃潰瘍・ピロリ菌感染 | 胃カメラ、ピロリ菌検査 |
| 炎症性腸疾患+便通症状 | 大腸カメラ検査 |
| 肝臓病 | 血液検査、腹部超音波検査など |
| 複数の消化器がんの家族歴 | 家族歴の内容に応じて必要な検査を検討します |
胃と大腸の両方について確認する必要がある場合には、当院では胃カメラと大腸カメラを同日に行うことも可能です。
一方、現在は特に症状がなく、全身の健康状態をまとめて確認したい場合には人間ドックという選択肢もあります。
当院での家族歴を踏まえた診療について
当院では、現在の症状だけでなく、これまでの病歴や検査歴、ご家族の病歴も含めて診療を行います。
「父が大腸がんだったけれど、自分は何歳から検査を受ければよいのか」「家族に胃がんが多いのでピロリ菌を調べたい」といったご相談でも構いません。
診察では主に次のような内容を確認します。
| 診察時に確認すること | 具体的な内容 |
|---|---|
| ご家族の病気 | どのような消化器疾患・がんがあったか |
| 血縁関係 | 父母、兄弟姉妹、祖父母など誰が発症したか |
| 発症した年齢 | 何歳ごろ病気になったか |
| ご自身の症状 | 胃痛、血便、便通異常などがないか |
| 健診結果 | 便潜血、貧血、肝機能異常などがないか |
| 過去の検査歴 | 胃カメラ・大腸カメラなどを最後に受けた時期 |
そのうえで、胃カメラ、大腸カメラ、ピロリ菌検査、血液検査などから必要なものをご提案します。
ご家族と同じ検査をそのまま受ければよいとは限りません。ご自身の状態に合わせて考えることが大切です。
また、家族歴から遺伝性疾患などが強く疑われ、より専門的な検査や診療が必要と考えられる場合には、患者さんのご希望も伺いながら適切な専門医療機関をご案内します。
家族歴についてよくある質問
親が大腸がんでした。自分も大腸カメラを受けたほうがよいですか?
親や兄弟姉妹など近い血縁者に大腸がんの既往がある場合には、ご自身の大腸がんリスクを考える際の重要な情報になります。
これまで大腸カメラを受けたことがない方は、一度受診して検査の時期についてご相談ください。
特に血便や便通変化、便潜血陽性などがある場合には、大腸カメラを検討します。
家族に胃がんがいます。ピロリ菌検査を受けたほうがよいですか?
胃がんにはピロリ菌感染が深く関係しており、ピロリ菌は家庭内で感染することもあります。
そのため、ご家族に胃がんやピロリ菌感染歴があり、ご自身がこれまで検査を受けていない場合には一度ご相談ください。
胃カメラ歴なども踏まえて必要な検査を検討します。
祖父母ががんでした。これも家族歴になりますか?
家族歴には祖父母などの血縁者の病歴も含まれます。
ただし、一般的には親や兄弟姉妹、子どもなど、より近い血縁者にどのような病気があったかを特に重視します。
複数のご家族に同じ病気がある場合には、そのこともお伝えください。
家族が若くして大腸がんになっています。注意したほうがよいですか?
ご家族が比較的若い年齢で大腸がんを発症している場合には、その発症年齢も重要な情報です。
また、家族内に大腸がんなどが複数みられる場合には、まれに遺伝性の病気が関係することがあります。
発症した人数や年齢を分かる範囲でお伝えください。必要に応じて専門医療機関への相談も検討します。
家族歴があっても症状がなければ検査は必要ありませんか?
症状がない方全員に同じ検査が必要というわけではありません。
一方で、大腸ポリープや早期の胃がん・大腸がんなどは、症状がない状態で見つかることもあります。
家族歴、ご自身の年齢、健診結果、これまでの検査歴を踏まえて、検査の必要性を判断することが大切です。





