血便や下痢を繰り返す場合は、腸に慢性的な炎症が起きていないか確認することが大切です
炎症性腸疾患は、腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気の総称です。英語の「Inflammatory Bowel Disease」を略して、IBDとも呼ばれます。
代表的な病気には、潰瘍性大腸炎とクローン病があります。どちらも症状が落ち着く「寛解期」と、炎症が強くなる「活動期」を繰り返すことがあり、長期的な治療や経過観察が必要です。
主な症状は、血便、下痢、腹痛、発熱、体重減少などです。感染性腸炎や過敏性腸症候群、大腸がんなどでも似た症状が現れるため、大腸カメラや組織検査を含めて原因を確認します。
目次
- 炎症性腸疾患とは
- 寛解期と活動期
- 潰瘍性大腸炎とクローン病の違い
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 炎症性腸疾患の主な症状
- 消化管以外に症状が出ることもあります
- このような方はご相談ください
- 早急な受診が必要な症状
- 炎症性腸疾患の原因
- 炎症性腸疾患と似た病気
- 炎症性腸疾患の検査・診断
- 主な検査
- 大腸カメラ検査
- 炎症性腸疾患は大腸カメラで分かりますか?
- 炎症性腸疾患の治療
- 薬物療法
- 外科治療
- 日常生活で気をつけること
- 食事を必要以上に制限しないことが大切です
- 炎症性腸疾患と大腸がんの関係
- 当院での炎症性腸疾患の診療
- 炎症性腸疾患についてのよくある質問
- 潰瘍性大腸炎とクローン病は治りますか?
- 炎症性腸疾患は大腸カメラで分かりますか?
- 血便が出たら潰瘍性大腸炎ですか?
- 過敏性腸症候群との違いは何ですか?
- 症状がなくなれば薬をやめてもよいですか?
- 炎症性腸疾患は大腸がんになりますか?
- 食べてはいけないものはありますか?
- 炎症性腸疾患は指定難病ですか?
炎症性腸疾患とは
炎症性腸疾患のうち、原因を明確に特定できない慢性の病気として、潰瘍性大腸炎とクローン病があります。
いずれも免疫反応の異常、遺伝的な要因、腸内細菌、食生活などが複雑に関係して発症すると考えられていますが、詳しい原因はまだすべて解明されていません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な病気 | 潰瘍性大腸炎、クローン病 |
| 主な症状 | 血便、下痢、腹痛、発熱、体重減少など |
| 病気の経過 | 症状が落ち着く寛解期と、悪化する活動期を繰り返します |
| 主な検査 | 血液検査、便検査、大腸カメラ、組織検査など |
| 主な治療 | 薬物療法、栄養療法、必要に応じて外科治療 |
| 診療の目標 | 炎症を抑え、症状が安定した状態を維持すること |
寛解期と活動期
炎症性腸疾患は、常に同じ症状が続くとは限りません。
| 状態 | 特徴 |
|---|---|
| 活動期 | 腸の炎症が強く、血便、下痢、腹痛などが現れている状態です |
| 寛解期 | 治療によって症状や炎症が落ち着いている状態です |
| 再燃 | 一度落ち着いた病気が、再び悪化することです |
症状が改善していても、腸の粘膜に炎症が残っている場合があります。そのため、自覚症状だけで薬を中止せず、検査結果も確認しながら治療を続けることが重要です。
潰瘍性大腸炎とクローン病の違い
潰瘍性大腸炎とクローン病は、炎症が起こる場所や広がり方に違いがあります。
| 比較項目 | 潰瘍性大腸炎 | クローン病 |
|---|---|---|
| 主な発症部位 | 大腸 | 口から肛門までの消化管 |
| 炎症の広がり方 | 直腸から連続して広がることが多い | 炎症のある部分と正常な部分が飛び飛びに現れる |
| 炎症の深さ | 主に大腸粘膜の表面 | 消化管壁の深い部分まで及ぶことがある |
| 主な症状 | 血便、下痢、腹痛、便意の切迫など | 腹痛、下痢、発熱、体重減少、肛門病変など |
| 主な合併症 | 大量出血、中毒性巨大結腸症、大腸がんなど | 狭窄、腸閉塞、瘻孔、膿瘍など |
| 主な内視鏡検査 | 大腸カメラ | 大腸カメラ、小腸の画像検査など |
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気です。
多くの場合、直腸から炎症が始まり、大腸の奥に向かって連続的に広がります。炎症の範囲によって、直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型などに分けられます。
クローン病
クローン病は、口から肛門までの消化管のどこにでも炎症が起こる可能性があります。
特に小腸の末端や大腸に病変がみられやすく、炎症が深くなると、腸管の狭窄や瘻孔、膿瘍などを生じることがあります。
クローン病が疑われる場合は、大腸だけでなく、大腸カメラで観察できる小腸の末端部分まで確認することが重要です。
炎症性腸疾患の主な症状
症状は病気の種類、炎症の範囲、重症度によって異なります。
| 症状 | 主な特徴 |
|---|---|
| 血便 | 便に鮮血が付く、血液と粘液が混じることがあります |
| 下痢 | 軟便や水様便が一日に何度も出ることがあります |
| 腹痛 | 下腹部を中心に、持続的または断続的に痛みます |
| 頻回の便意 | 排便後すぐに再び便意を感じることがあります |
| 便意の切迫 | 急に便意が起こり、我慢しにくくなります |
| 発熱 | 炎症が強い場合に現れることがあります |
| 体重減少 | 食欲低下や栄養吸収の低下によって起こります |
| 貧血 | 腸からの出血や栄養不足が原因となります |
| 倦怠感 | 炎症や貧血により、疲れやすくなることがあります |
消化管以外に症状が出ることもあります
炎症性腸疾患では、腸以外の部位にも症状が現れることがあります。
- 関節の痛みや腫れ
- 皮膚の赤みやしこり
- 目の充血や痛み
- 口内炎
- 肝臓や胆道の異常
腸の症状が落ち着いている時期にも現れる場合があるため、気になる変化があれば医師へお伝えください。
このような方はご相談ください
| 気になる状態 | 確認したい理由 |
|---|---|
| 血便を繰り返している | 潰瘍性大腸炎や大腸がんなどとの区別が必要です |
| 下痢が数週間続いている | 慢性的な腸の炎症がないか確認します |
| 腹痛と発熱を繰り返す | 感染症やクローン病などを検討します |
| 夜中も下痢で目が覚める | 腸に炎症がある場合にみられることがあります |
| 意図せず体重が減っている | 炎症や栄養吸収の低下を確認します |
| 貧血や炎症反応を指摘された | 消化管からの出血や炎症の可能性があります |
| 肛門周囲の腫れや膿がある | クローン病に伴う肛門病変の可能性があります |
| 家族に炎症性腸疾患の方がいる | 症状がある場合は詳しい検査を検討します |
早急な受診が必要な症状
次のような症状がある場合は、重い炎症や合併症が起きている可能性があります。
- 大量の血便が出る
- 強い腹痛が続いている
- お腹が大きく張っている
- 高熱がある
- 嘔吐を繰り返している
- 水分を十分に取れない
- 意識がぼんやりする
- 動悸や息切れ、強いふらつきがある
大量の出血や強い腹痛、発熱、腹部膨満がある場合は、速やかに救急対応が可能な医療機関を受診してください。
炎症性腸疾患の原因
潰瘍性大腸炎とクローン病の原因は、まだ完全には解明されていません。
本来は細菌やウイルスなどから体を守る免疫機能が過剰に反応し、腸の粘膜に慢性的な炎症を起こすと考えられています。
| 関係すると考えられる要因 | 内容 |
|---|---|
| 免疫反応の異常 | 免疫機能が腸の粘膜に持続的な炎症を起こします |
| 遺伝的要因 | 発症しやすさに関係する遺伝的背景があります |
| 腸内細菌 | 腸内細菌の構成や免疫との関係が研究されています |
| 食生活・生活環境 | 食事や衛生環境など複数の要因が関係すると考えられています |
| 喫煙 | 特にクローン病の発症や悪化との関係があります |
| 感染症 | 腸炎をきっかけに症状が明らかになる場合があります |
食べ物やストレスだけが直接の原因ではありません。ただし、食事内容や睡眠不足、心理的な負担などによって症状が悪化する場合はあります。
炎症性腸疾患と似た病気
下痢や血便があるからといって、すべてが炎症性腸疾患とは限りません。
| 病気 | 主な特徴 |
|---|---|
| 感染性腸炎 | 細菌やウイルスによって急な下痢、腹痛、発熱が起こります |
| 過敏性腸症候群 | 腹痛と便通異常が続きますが、通常は血便を伴いません |
| 虚血性腸炎 | 突然の腹痛と血便が現れることがあります |
| 大腸憩室炎 | 腹痛や発熱がみられ、出血する場合もあります |
| 大腸がん | 血便、便通の変化、貧血、体重減少などを起こします |
| 薬剤性腸炎 | 抗菌薬や鎮痛薬などが腸炎の原因になることがあります |
診断では、症状だけでなく、便検査、大腸カメラ、組織検査などを組み合わせます。
炎症性腸疾患の検査・診断
診察では、血便や下痢が始まった時期、便の回数、発熱、体重変化、服用中の薬などを確認します。
主な検査
| 検査 | 主な目的 |
|---|---|
| 血液検査 | 炎症反応、貧血、栄養状態、肝機能などを確認します |
| 便検査 | 細菌感染の有無や腸管の炎症を調べます |
| 大腸カメラ | 炎症の範囲や程度、粘膜の特徴を確認します |
| 組織検査 | 腸粘膜を採取し、炎症の特徴やほかの病気を調べます |
| CT・MRI検査 | 腸管の狭窄、膿瘍、瘻孔などを確認します |
| 小腸の検査 | クローン病が疑われる場合に小腸病変を調べます |
大腸カメラ検査
大腸カメラでは、大腸粘膜を直接観察し、炎症の広がりや重症度を確認します。
| 大腸カメラで確認する内容 | 主な目的 |
|---|---|
| 炎症の範囲 | 直腸からどこまで炎症が広がっているか確認します |
| 粘膜の赤み・むくみ | 炎症の活動性を評価します |
| びらん・潰瘍 | 粘膜の傷や深さを確認します |
| 出血 | 粘膜からの出血の状態を確認します |
| 炎症の連続性 | 潰瘍性大腸炎とクローン病を区別する参考にします |
| 狭窄 | 腸管が狭くなっていないか確認します |
| 腫瘍性病変 | 長期経過に伴う大腸がんなどを確認します |
炎症性腸疾患の診断では、大腸カメラによる観察に加え、組織を採取して病理検査を行うことが重要です。
炎症性腸疾患は大腸カメラで分かりますか?
潰瘍性大腸炎やクローン病の診断には、大腸カメラが重要です。
大腸カメラでは、粘膜の赤み、むくみ、潰瘍、出血などを直接観察できます。また、炎症が連続しているか、飛び飛びに生じているかなど、病気を見分ける手がかりも得られます。
ただし、内視鏡の見た目だけで確定できるとは限りません。組織検査や便検査、血液検査、症状の経過などを含めて総合的に診断します。
| 大腸カメラの役割 | 内容 |
|---|---|
| 診断 | 炎症の特徴や広がりを確認します |
| 組織検査 | 粘膜を採取し、炎症の性質を調べます |
| 重症度の評価 | 粘膜の傷や出血の程度を確認します |
| 治療効果の確認 | 症状だけでなく、粘膜の改善を確認します |
| がんの早期発見 | 長期間経過した患者様の腫瘍性変化を調べます |
日本消化器内視鏡学会でも、IBDでは大腸カメラによって病変の範囲や程度を評価し、組織検査を組み合わせることが説明されています。
炎症性腸疾患の治療
治療の目的は、腸の炎症を抑えて症状を改善し、その状態を長く維持することです。
使用する薬は、潰瘍性大腸炎かクローン病か、炎症の範囲や重症度、過去の治療歴などによって異なります。
| 主な治療 | 内容 |
|---|---|
| 5-アミノサリチル酸製剤 | 腸粘膜の炎症を抑える薬です |
| ステロイド薬 | 活動期の強い炎症を抑えるために使用します |
| 免疫調節薬 | 免疫反応を調整し、再燃を予防します |
| 生物学的製剤 | 炎症に関係する特定の物質や細胞に作用します |
| 低分子化合物 | 免疫反応の伝達経路などに作用する内服薬です |
| 栄養療法 | 主にクローン病で、腸への負担を抑えながら栄養を補います |
| 外科治療 | 薬で改善しない場合や合併症がある場合に検討します |
薬物療法
軽症から中等症の潰瘍性大腸炎では、5-アミノサリチル酸製剤が用いられます。炎症が強い場合にはステロイド薬を使用し、治療効果が十分でない場合や再燃を繰り返す場合は、免疫調節薬や生物学的製剤などを検討します。
治療方法は進歩しており、患者様の病状や生活背景に合わせて薬を選択します。
外科治療
次のような場合は、外科治療が必要になることがあります。
- 薬物療法で炎症を抑えられない
- 大量出血がある
- 腸に穴が開いた
- 強い狭窄や腸閉塞がある
- 膿瘍や瘻孔がある
- 大腸がんや前がん病変が見つかった
入院や手術、専門的な薬物治療が必要な場合は、対応可能な医療機関へご紹介します。
日常生活で気をつけること
炎症性腸疾患では、病気の状態に合わせて食事や生活を調整します。
| 生活上のポイント | 具体的な対応 |
|---|---|
| 処方薬を継続する | 症状がなくても自己判断で中止しないようにします |
| 食事を記録する | 症状が悪化しやすい食品を確認します |
| 栄養状態を保つ | 体重や血液検査の結果を確認します |
| 十分に休む | 活動期は無理をせず、休息を取ります |
| 禁煙する | 特にクローン病では禁煙が重要です |
| 感染症に注意する | 免疫を抑える薬の使用中は発熱などに注意します |
| 定期的に受診する | 症状と検査結果の両方を確認します |
食事を必要以上に制限しないことが大切です
すべての患者様に共通して禁止される食品はありません。
活動期には脂肪分や食物繊維を調整する場合がありますが、寛解期に過度な制限を続けると、栄養不足や体重減少につながることがあります。
自己判断で多くの食品を避けるのではなく、病気の状態に合わせて医師や管理栄養士と相談しましょう。
炎症性腸疾患と大腸がんの関係
潰瘍性大腸炎や大腸型のクローン病では、大腸の炎症が長く続くことで、大腸がんの発症リスクが高くなることがあります。
そのため、一定期間以上経過した方では、症状が落ち着いていても大腸カメラによる定期的な検査を行います。
| 経過観察で確認する内容 | 目的 |
|---|---|
| 炎症の範囲 | 大腸のどこまで病変があるか確認します |
| 病気の期間 | 発症からどの程度経過しているか確認します |
| 粘膜の状態 | 炎症が残っていないか観察します |
| 異形成 | がんになる前段階の細胞変化を確認します |
| 大腸がん | 小さな腫瘍性病変を早期に発見します |
潰瘍性大腸炎では、病気の範囲や経過年数などに応じて、サーベイランス大腸内視鏡が推奨されます。
当院での炎症性腸疾患の診療
当院では、血便や下痢がある場合、症状の期間や便の回数、発熱、体重変化、服用中の薬などを確認します。
必要に応じて血液検査、便検査、大腸カメラ、組織検査を行い、感染性腸炎や大腸がんなど、似た症状を起こす病気との区別を行います。
| 検査結果・状態 | 当院での対応 |
|---|---|
| 潰瘍性大腸炎が疑われる | 大腸カメラや組織検査を行います |
| クローン病が疑われる | 回腸末端まで観察し、必要に応じて専門検査をご案内します |
| 軽度の炎症が確認された | 病状に応じた治療と経過観察を行います |
| 感染性腸炎が疑われる | 便検査などで原因を確認します |
| 強い炎症や合併症がある | 入院治療に対応する医療機関へご紹介します |
| 専門的な薬物療法が必要 | IBD診療に対応する専門医療機関と連携します |
| 長期経過している | 大腸カメラによる定期的な観察を検討します |
検査結果だけでなく、症状や生活への影響も確認しながら、治療後の経過を継続してみていきます。
炎症性腸疾患についてのよくある質問
潰瘍性大腸炎とクローン病は治りますか?
現在は、薬によって炎症を抑え、症状が落ち着いた寛解状態を維持することが治療の中心です。
症状がなくても再燃することがあるため、定期的な受診と治療の継続が大切です。
炎症性腸疾患は大腸カメラで分かりますか?
大腸カメラでは、炎症の範囲や粘膜の特徴を直接確認できます。
ただし、確定診断には組織検査、便検査、血液検査なども必要です。
血便が出たら潰瘍性大腸炎ですか?
血便は潰瘍性大腸炎だけでなく、痔、感染性腸炎、大腸ポリープ、大腸がんなどでも起こります。
繰り返す場合や下痢・腹痛を伴う場合は、原因を確認するために受診してください。
過敏性腸症候群との違いは何ですか?
過敏性腸症候群は、腸に明らかな炎症がないにもかかわらず、腹痛や便通異常が続く病気です。
炎症性腸疾患では、血液検査や便検査、大腸カメラなどで腸の炎症が確認されます。
症状がなくなれば薬をやめてもよいですか?
自己判断で薬を中止すると、再燃する可能性があります。
症状がなくても粘膜に炎症が残っている場合があるため、医師と相談しながら薬を調整します。
炎症性腸疾患は大腸がんになりますか?
病気が長期間続き、広い範囲に炎症がある場合は、大腸がんのリスクが高くなることがあります。
病状や経過年数に応じて、定期的な大腸カメラをご案内します。
食べてはいけないものはありますか?
すべての方に共通して禁止される食品はありません。
活動期と寛解期、狭窄の有無などによって注意点が異なるため、病状に合わせて食事を調整します。
炎症性腸疾患は指定難病ですか?
潰瘍性大腸炎とクローン病は、国の指定難病に含まれています。
一定の重症度などの条件を満たす場合は医療費助成の対象となることがあるため、診断後に専門医療機関や自治体の窓口へご相談ください。

