貧血を指摘された方へ|考えられる原因と受診の目安
健康診断や人間ドックで「貧血があります」「ヘモグロビンが低い」と指摘されても、自覚症状がないとそのままにしてしまう方も少なくありません。
貧血にはさまざまな原因がありますが、消化器内科で特に確認したいのが、胃や大腸など消化管から少量の出血が続いていないかという点です。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、大腸ポリープ、大腸がんなどでは、目で見て分かる血便や吐血がなくても、少しずつ出血が続いて貧血につながることがあります。
特に、鉄欠乏性貧血を指摘された、原因が分からないまま貧血を繰り返している、黒い便や血便、体重減少などを伴う場合には、出血の原因を確認することが大切です。
当院では、血液検査の結果や症状を確認し、必要に応じて胃カメラ検査や大腸カメラ検査などをご案内しています。
目次
- 貧血とは
- 貧血を引き起こす主な原因
- 鉄分の不足
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 胃炎などからの出血
- 胃がん
- 大腸ポリープ・大腸がん
- 炎症性腸疾患
- 消化器以外の原因
- このような貧血を指摘された方はご相談ください
- 早めの受診をおすすめする症状
- 貧血を指摘された方におすすめする検査
- 血液検査
- 胃カメラ検査
- 大腸カメラ検査
- 胃と大腸の両方を確認することもあります
- 当院での貧血の診療について
- 貧血を指摘された方からよくある質問
- 貧血を指摘されましたが、自覚症状がありません。受診したほうがよいですか?
- 鉄分を摂れば貧血は治りますか?
- 貧血がある場合は胃カメラを受けたほうがよいですか?
- 血便がなくても大腸カメラが必要になることはありますか?
- 女性の貧血は月経が原因ではないですか?
貧血とは
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが減少し、体の各組織へ十分な酸素を運びにくくなっている状態です。
貧血が進むと、疲れやすい、息切れがする、動悸がする、立ちくらみがあるといった症状が現れることがあります。
一方で、ゆっくりと貧血が進んだ場合には体がある程度慣れてしまい、自覚症状がほとんどないまま健康診断で初めて指摘されることもあります。
| 貧血でみられる症状 | よくある状態 |
|---|---|
| 疲れやすい | 少し動いただけでも疲労感が強くなる |
| 息切れがする | 階段や歩行などで息苦しく感じる |
| 動悸がする | 心拍が速く感じたり、ドキドキしたりする |
| 立ちくらみ・めまい | 立ち上がったときなどにふらつく |
| 顔色が悪い | 周囲から顔色が白いと指摘されることがある |
| 頭痛・集中しにくい | 酸素不足の影響で症状が出ることがあります |
貧血の程度は血液検査で確認しますが、数値だけでなく、その原因を調べることが重要です。
特に、鉄が不足して起こる鉄欠乏性貧血では、慢性的な出血が隠れていないかを確認する必要があります。
貧血を引き起こす主な原因
貧血には、鉄分の不足、出血、造血機能の異常などさまざまな原因があります。
消化器内科では、特に消化管からの慢性的な出血がないかを確認します。
鉄分の不足
鉄はヘモグロビンを作るために必要な栄養素です。
食事から摂取する鉄が不足している場合や、必要量が増えている場合には鉄欠乏性貧血になることがあります。
ただし、鉄欠乏性貧血を「食事の鉄分不足だけ」と判断するのは適切ではありません。
特に成人で原因がはっきりしない場合には、どこかから慢性的に出血していないかを調べることが大切です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸に潰瘍ができると、そこから少しずつ出血が続くことがあります。
出血量が多ければ吐血や黒い便が現れますが、少量の場合には見た目では分からず、貧血をきっかけに潰瘍が見つかることもあります。
胃痛やみぞおちの痛みを伴うこともありますが、症状が目立たないケースもあります。
胃炎などからの出血
胃粘膜の炎症やびらんから出血し、貧血につながることがあります。
鎮痛薬など一部の薬が胃粘膜に影響している場合もあるため、服用している薬について確認することも重要です。
胃がん
胃がんから少量の出血が続き、鉄欠乏性貧血として見つかることがあります。
進行すると食欲不振、胃もたれ、体重減少などが現れる場合がありますが、早い段階では症状がないこともあります。
原因が分からない鉄欠乏性貧血では、胃カメラで胃の状態を確認することがあります。
大腸ポリープ・大腸がん
大腸ポリープや大腸がんの表面から少量の出血が続くと、徐々に鉄が失われて貧血になる場合があります。
血便が見えることもありますが、出血量が少ない場合には便の色に変化がないこともあります。
大腸がんでは、便が細い、便秘と下痢を繰り返す、残便感、体重減少などを伴うことがあります。
便に血が見えない場合でも、消化管出血を否定することはできません。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病などでは、腸粘膜の炎症や出血によって貧血になることがあります。
慢性的な下痢や血便、腹痛などを伴うことがあります。
下痢や血便が長く続いている方では、大腸カメラなどによる確認が必要になる場合があります。
消化器以外の原因
女性では月経による出血量が多い場合などにも鉄欠乏性貧血が起こります。
そのほか、血液の病気や腎臓の病気など、消化器以外の原因で貧血になることもあります。
すべての貧血が胃や大腸からの出血によるものではないため、血液検査の内容や症状を踏まえて原因を考えることが大切です。
このような貧血を指摘された方はご相談ください
健康診断などで貧血を指摘された場合には、以前の検査結果と比較して変化がないか確認してください。
特に次のような場合には、一度ご相談ください。
| 状況・症状 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 鉄欠乏性貧血を指摘された | 慢性的な出血など原因を確認します |
| 貧血を何度も繰り返している | 原因が十分に調べられているか確認します |
| 鉄剤を飲むと改善するが再び貧血になる | 鉄が失われ続ける原因がないか確認します |
| 黒い便が出る | 胃・十二指腸などからの出血を確認します |
| 血便がある | 大腸・直腸からの出血などを確認します |
| 便が以前より細い | 大腸の病変がないか確認することがあります |
| 体重が減っている | 消化器疾患を含めて原因を調べます |
特に、鉄剤を飲んで数値が改善しても、なぜ鉄が不足したのかという原因が解決していなければ、再び貧血になることがあります。
貧血そのものを治療するだけでなく、原因となっている病気がないか確認することが重要です。
早めの受診をおすすめする症状
貧血に加えて、次のような症状がある場合には早めに医療機関を受診してください。
- 黒いタール状の便が出ている
- 血便や大量の下血がある
- 吐血した
- 強いふらつきやめまいがある
- 少し動いただけで息切れする
- 強い動悸がある
- 冷や汗が出る
- 意識が遠のくような感じがある
- 強い胃痛や腹痛がある
- 原因不明の体重減少がある
特に、黒い便や血便とともに強いふらつき・動悸などがある場合には、消化管から出血している可能性があります。
出血量が多いと、短期間で貧血が進行することがあります。
息苦しさが強い、立っていられないほどふらつく、大量の出血がある場合には、通常の外来受診を待たず救急受診が必要になることがあります。
貧血を指摘された方におすすめする検査
貧血では、まず血液検査によって貧血の程度や種類を確認します。
そのうえで鉄欠乏性貧血などがあり、消化管からの出血が疑われる場合には、胃カメラや大腸カメラで出血源となる病変がないか確認します。
血液検査
血液検査では、ヘモグロビンだけではなく、鉄の状態などを確認します。
| 検査項目 | 主に確認する内容 |
|---|---|
| ヘモグロビン | 貧血の程度を確認します |
| 赤血球関連の項目 | 貧血の種類を考える参考にします |
| 血清鉄 | 血液中の鉄の状態を確認します |
| フェリチン | 体内に蓄えられている鉄の量を確認します |
| その他の血液検査 | 炎症や全身状態などを確認します |
鉄欠乏性貧血かどうかを確認することは、その後の検査を考えるうえで重要です。
胃カメラ検査
胃カメラでは、食道・胃・十二指腸を直接観察します。
貧血がある方では、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎、胃がんなど、慢性的な出血につながる病変がないか確認します。
| 胃カメラで確認すること | 主な内容 |
| 胃潰瘍 | 潰瘍や出血している部分がないか確認します |
| 十二指腸潰瘍 | 十二指腸からの出血がないか確認します |
| 胃粘膜の炎症・びらん | 少量出血につながる病変がないか確認します |
| 胃がんなどの病変 | 腫瘍性病変から出血していないか確認します |
黒い便や胃痛、食欲不振などを伴う場合には、胃カメラによる確認が特に重要です。
大腸カメラ検査
大腸カメラでは、大腸・直腸の粘膜を直接観察します。
原因の分からない鉄欠乏性貧血がある場合には、大腸ポリープ、大腸がん、炎症性腸疾患など、出血につながる病変がないか確認します。
| 大腸カメラで確認すること | 主な内容 |
|---|---|
| 大腸がん | 慢性的な出血につながる腫瘍性病変がないか確認します |
| 大腸ポリープ | 出血するポリープなどがないか確認します |
| 大腸粘膜の炎症 | 潰瘍性大腸炎などの炎症がないか確認します |
| 出血の原因 | 目に見えない出血の原因となる病変を調べます |
血便がなくても、大腸から少量の出血が続いている場合があります。
胃と大腸の両方を確認することもあります
貧血の原因がはっきりしない場合には、症状などを踏まえて胃と大腸の両方を調べることがあります。
当院では、必要な場合には胃カメラと大腸カメラを同日に行うことも可能です。
どちらか一方だけに原因があるとは限らないため、貧血の種類や症状に合わせて検査を検討します。
当院での貧血の診療について
当院では、貧血を指摘された方について、まず健康診断などの検査結果を確認します。
ヘモグロビンの値だけではなく、鉄欠乏があるのか、以前から数値が下がっているのかなども確認します。
| 診察時に確認すること | 具体的な内容 |
|---|---|
| 血液検査の結果 | ヘモグロビンや鉄、フェリチンなどを確認します |
| 過去の数値 | 以前から貧血があるのか、最近悪化したのか確認します |
| 便の状態 | 黒い便、血便などがないか確認します |
| 胃腸症状 | 胃痛、腹痛、下痢などがないか確認します |
| 体重の変化 | 原因不明の体重減少がないか確認します |
| 服薬・既往歴 | 鉄剤や鎮痛薬などの使用状況を確認します |
必要に応じて血液検査を行い、消化管からの出血が疑われる場合には胃カメラ・大腸カメラをご提案します。
消化器以外の原因が考えられる場合には、患者さんの状況に応じて適切な診療科や医療機関をご案内します。
また、健康診断を長く受けていない方などでは全身状態を確認する方法として人間ドックをご案内する場合もありますが、すでに貧血を指摘されている場合には、健診ではなく診療として原因を調べることが優先されます。
「鉄剤を飲んで数値を上げること」と「貧血の原因を調べること」は別です。 原因が分からない貧血をそのままにせず、一度ご相談ください。
貧血を指摘された方からよくある質問
貧血を指摘されましたが、自覚症状がありません。受診したほうがよいですか?
自覚症状がなくても、健康診断などで貧血を指摘された場合には原因を確認することが大切です。
特に、鉄欠乏性貧血や以前より悪化している貧血では、慢性的な出血がないか確認する必要があります。
検査結果がある場合には受診時にお持ちください。
鉄分を摂れば貧血は治りますか?
鉄分不足による貧血では、鉄剤などによって数値が改善することがあります。
ただし、胃や大腸などから出血が続いている場合には、補った鉄が再び失われてしまいます。
鉄を補うだけでなく、「なぜ鉄が不足したのか」を確認することが重要です。
貧血がある場合は胃カメラを受けたほうがよいですか?
鉄欠乏性貧血などで消化管からの出血が疑われる場合には、胃カメラを検討します。
特に、黒い便、胃痛、食欲不振などを伴う場合には、胃潰瘍や胃がんなどがないか確認することが大切です。
血便がなくても大腸カメラが必要になることはありますか?
あります。
大腸から少量ずつ出血している場合には、肉眼で血液が分からないことがあります。
原因不明の鉄欠乏性貧血では、血便がなくても大腸カメラを検討することがあります。
女性の貧血は月経が原因ではないですか?
月経による出血が鉄欠乏性貧血の原因になることはあります。
ただし、月経があるからといって、すべての貧血をそれだけで説明できるとは限りません。
貧血の程度や経過、胃腸症状などを確認し、必要に応じて消化管の検査も検討します。



