生の魚介類を食べた数時間後に、急なみぞおちの痛みが現れた場合はご相談ください
胃アニサキス症は、魚介類に寄生するアニサキスの幼虫が胃壁に刺さり、強い腹痛や吐き気などを引き起こす病気です。
刺身や寿司、しめ鯖などを食べた後、数時間から十数時間以内に症状が現れることが多く、胃カメラで虫体を確認して摘出すると、速やかに症状が軽くなる場合があります。
ただし、腹痛の原因はアニサキスだけではありません。胃潰瘍、胆石症、急性膵炎などでも似た症状が起こるため、食事内容と症状だけで自己判断しないことが大切です。
目次
- 胃アニサキス症とは
- アニサキスの特徴
- 胃アニサキス症の主な症状
- 腸アニサキス症との違い
- このような症状がある方はご相談ください
- 緊急性が高い症状
- 胃アニサキス症の原因となる魚介類
- 胃アニサキス症の検査・診断
- 胃カメラ検査
- その他の検査
- 胃アニサキス症は胃カメラで分かりますか?
- 胃アニサキス症の治療
- 虫体を摘出すると痛みは治まりますか?
- 胃アニサキス症の予防
- 当院での胃アニサキス症の診療
- 胃アニサキス症についてのよくある質問
- アニサキスは自然に死にますか?
- アニサキスに効く薬はありますか?
- しめ鯖ならアニサキスは大丈夫ですか?
- よく噛めば予防できますか?
- 冷蔵庫に入れておけば死にますか?
- アニサキス症は人から人へうつりますか?
- 一度かかると、二度とかかりませんか?
胃アニサキス症とは
アニサキスは、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、マグロ、イカなどの魚介類に寄生する線虫の一種です。
アニサキスの幼虫が生きたまま体内に入ると、胃や腸の壁に刺さり、炎症やアレルギー反応を起こすことがあります。胃に症状が現れるものを「胃アニサキス症」、腸に症状が現れるものを「腸アニサキス症」と呼びます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原因 | アニサキス幼虫が寄生した魚介類の生食 |
| 主な発症部位 | 胃、腸 |
| 主な症状 | 激しいみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐など |
| 発症までの時間 | 胃の場合は食後数時間から十数時間後が目安 |
| 主な検査 | 胃カメラ |
| 主な治療 | 胃カメラによる虫体の摘出 |
| 注意する症状 | じんま疹、呼吸困難、意識低下などのアレルギー症状 |
アニサキスの特徴
アニサキスの幼虫は、長さ2~3cm、幅0.5~1mmほどで、白い糸のような形をしています。
魚介類が生きている間は内臓付近に寄生していることが多いものの、魚が死んで時間がたつと、内臓から食用部分の筋肉へ移動することがあります。
胃アニサキス症の主な症状
胃アニサキス症では、生の魚介類を食べた後、突然強いみぞおちの痛みが現れることがあります。
| 症状 | 主な特徴 |
|---|---|
| みぞおちの激痛 | 急に強く痛み、波があるように感じる場合があります |
| 吐き気 | 強い胃痛とともに現れることがあります |
| 嘔吐 | 食べたものや胃液を吐くことがあります |
| 胃の張り | みぞおち周辺が張るように感じる場合があります |
| じんま疹 | アニサキスによるアレルギー反応として現れることがあります |
| 呼吸困難 | 重いアレルギー反応では、呼吸が苦しくなることがあります |
厚生労働省では、急性胃アニサキス症について、魚介類を食べてから数時間から十数時間後に、激しいみぞおちの痛み、悪心、嘔吐などが現れるとしています。
腸アニサキス症との違い
| 比較項目 | 胃アニサキス症 | 腸アニサキス症 |
|---|---|---|
| 発症部位 | 胃 | 小腸など |
| 発症時期 | 食後数時間から十数時間後 | 食後十数時間後から数日後 |
| 主な痛み | みぞおちの激しい痛み | 下腹部を中心とした強い痛み |
| 主な検査 | 胃カメラ | CT検査、腹部超音波検査など |
| 主な治療 | 胃カメラによる摘出 | 対症療法、状態により外科的処置 |
腸アニサキス症では、胃カメラで虫体を摘出することはできません。腸閉塞や腸穿孔などを起こすこともあるため、専門的な検査や入院治療が必要になる場合があります。
このような症状がある方はご相談ください
| 気になる状態 | 確認したい理由 |
|---|---|
| 刺身や寿司を食べた後に胃が痛くなった | 胃アニサキス症の可能性があります |
| みぞおちに突然強い痛みが出た | 胃潰瘍など、ほかの病気との区別が必要です |
| 胃痛とともに吐き気がある | 胃壁の炎症が起きている可能性があります |
| 同じ食事をした人に症状がある | 共通の食品が原因となっている場合があります |
| 以前にアニサキス症になった | 再び発症する可能性があります |
| 魚介類を食べた後にじんま疹が出た | アニサキスアレルギーの可能性があります |
受診時には、次の内容をお伝えいただくと診断の参考になります。
- 食べた魚介類の種類
- 生食した日時
- 症状が始まった時間
- 痛みの場所や強さ
- 吐き気や嘔吐の有無
- じんま疹などの皮膚症状
- 一緒に食事をした方の症状
緊急性が高い症状
次のような症状がある場合は、速やかに救急対応が可能な医療機関を受診してください。
- 呼吸が苦しい
- のどや顔が腫れている
- 全身にじんま疹が広がっている
- 血圧低下や意識がもうろうとする
- 水分も取れないほど嘔吐している
- お腹全体に強い痛みがある
- お腹が硬くなっている
呼吸困難や意識低下を伴う場合は、アナフィラキシーの可能性があります。緊急の処置が必要です。
胃アニサキス症の原因となる魚介類
アニサキスは、さまざまな海産魚介類に寄生しています。
| 主な魚介類 | 食べ方の例 |
|---|---|
| サバ | 刺身、しめ鯖 |
| アジ | 刺身、たたき |
| サンマ | 刺身 |
| カツオ | 刺身、たたき |
| イワシ | 刺身、酢締め |
| サケ | 刺身、寿司 |
| ヒラメ | 刺身、寿司 |
| マグロ | 刺身、寿司 |
| イカ | 刺身 |
これらの魚介類を食べれば必ず発症するわけではありません。また、表にない魚介類にもアニサキスが寄生することがあります。
酢、塩、しょうゆ、わさびなど、一般的な調理方法や薬味だけではアニサキスを死滅させることはできません。
胃アニサキス症の検査・診断
診察では、生の魚介類を食べた時間、症状が始まった時間、痛みの場所などを確認します。
急なみぞおちの痛みがあり、胃アニサキス症が疑われる場合は、胃カメラが診断と治療の中心になります。
胃カメラ検査
胃カメラでは、食道・胃・十二指腸を観察し、胃粘膜に刺さっているアニサキスの虫体を探します。
| 胃カメラで確認する内容 | 主な目的 |
|---|---|
| アニサキスの虫体 | 胃粘膜に刺さっている虫体を確認します |
| 刺入部位 | 虫体が刺さっている場所を確認します |
| 胃粘膜の腫れ | 虫体周囲のむくみや炎症を観察します |
| びらん・出血 | 胃粘膜の傷や出血を確認します |
| 胃潰瘍 | 強い胃痛を起こす別の病気を確認します |
| 胃がん | 症状の原因となる病変がないか観察します |
虫体は1匹とは限らないため、胃の中を丁寧に観察する必要があります。
その他の検査
胃カメラで虫体が見つからない場合や、下腹部痛が中心の場合は、別の病気や腸アニサキス症を考えて検査を行うことがあります。
| 検査 | 主な目的 |
|---|---|
| 血液検査 | 炎症やアレルギー反応、全身状態を確認します |
| 腹部超音波検査 | 腸管や胆のうなどの状態を確認します |
| CT検査 | 腸管のむくみ、腸閉塞、腹部の炎症などを調べます |
必要な検査や入院治療が当院で対応できない場合は、適切な医療機関をご紹介します。
胃アニサキス症は胃カメラで分かりますか?
胃アニサキス症では、胃カメラによって虫体を直接確認できます。
胃カメラは診断だけでなく、その場で虫体を摘出できる点も特徴です。胃粘膜に刺さったアニサキスを鉗子でつかみ、虫体を残さないように取り除きます。
ただし、次のような場合は胃カメラで確認できないことがあります。
- すでに虫体が胃から腸へ移動している
- 痛みの原因がアニサキスではない
- 虫体が胃のひだに隠れている
- 食べ物が胃内に多く残り、十分に観察できない
そのため、食べた物や発症時間、痛みの場所を含めて総合的に判断します。
胃アニサキス症の治療
胃アニサキス症では、胃カメラを用いて虫体を摘出します。
厚生労働省によると、現在、アニサキス幼虫に対する有効な治療薬はなく、胃アニサキス症では胃カメラで虫体を摘出することが基本です。
| 治療方法 | 内容 |
|---|---|
| 内視鏡による摘出 | 鉗子で虫体をつかみ、胃粘膜から取り除きます |
| 痛みや吐き気への治療 | 症状に応じて薬を使用します |
| アレルギー症状への治療 | 抗アレルギー薬などを使用します |
| アナフィラキシーへの対応 | 緊急の処置が必要です |
| 腸アニサキス症への治療 | 対症療法を行い、重症時は外科処置を検討します |
虫体を摘出すると痛みは治まりますか?
胃粘膜に刺さった虫体を摘出すると、強い痛みが速やかに軽くなることがあります。
ただし、虫体を取り除いた後も、粘膜の炎症や腫れによってしばらく違和感が残る場合があります。症状の経過に応じて、胃酸を抑える薬や胃粘膜を保護する薬などを使用します。
胃アニサキス症の予防
アニサキスによる食中毒を防ぐには、魚介類の鮮度管理と十分な加熱・冷凍が重要です。
| 予防方法 | ポイント |
|---|---|
| 加熱する | 中心部まで60℃で1分以上、または70℃以上で加熱します |
| 冷凍する | マイナス20℃で24時間以上冷凍します |
| 内臓を早く取り除く | 購入後は低温を保ち、できるだけ早く処理します |
| 内臓を生で食べない | アニサキスは内臓付近に多く寄生します |
| 目で確認する | 調理時に虫体を見つけた場合は取り除きます |
| 鮮度を保つ | 持ち帰る際も氷や保冷剤で冷やします |
一般的な酢締め、塩漬け、しょうゆ、わさびでは十分な予防になりません。また、家庭用冷蔵庫で冷やすだけでも死滅しないため注意が必要です。
当院での胃アニサキス症の診療
当院では、生の魚介類を食べた後にみぞおちの強い痛みが現れた場合、食事内容や発症時間、痛みの状態を確認します。
胃アニサキス症が疑われる場合は、胃カメラで胃粘膜を観察し、虫体が確認できれば摘出を検討します。
| 検査結果・状態 | 当院での対応 |
|---|---|
| 胃内に虫体が見つかった | 胃カメラで虫体を摘出します |
| 胃炎や胃潰瘍が見つかった | 病変に応じた治療を行います |
| 虫体が確認できない | 症状に応じてほかの病気や腸アニサキス症を検討します |
| 腸アニサキス症が疑われる | CTなどに対応する医療機関をご紹介します |
| 強いアレルギー症状がある | 救急対応が可能な医療機関での処置が必要です |
検査ではアニサキスだけに注目するのではなく、胃潰瘍や胆のう・膵臓の病気など、似た症状を起こす疾患の可能性も考えながら対応します。
胃アニサキス症についてのよくある質問
アニサキスは自然に死にますか?
アニサキスは人の体内で長期間成長し続ける寄生虫ではなく、通常は一定期間で死滅します。
ただし、その間に強い痛みが続くことがあるため、胃に虫体がいる場合は胃カメラによる摘出を検討します。
アニサキスに効く薬はありますか?
現在、アニサキス幼虫を確実に駆除できる治療薬はありません。
胃アニサキス症では、胃カメラで虫体を確認して摘出することが基本です。
しめ鯖ならアニサキスは大丈夫ですか?
酢で締めただけでは、アニサキスは死滅しません。
適切な加熱または冷凍処理をしていないしめ鯖では、アニサキス症が起こる可能性があります。
よく噛めば予防できますか?
よく噛むことだけで、アニサキス症を確実に予防することはできません。
予防には、十分な加熱や冷凍、鮮度管理、目視による除去が重要です。
冷蔵庫に入れておけば死にますか?
一般的な冷蔵温度では、アニサキスを死滅させることはできません。
予防には、マイナス20℃で24時間以上の冷凍、または十分な加熱が必要です。
アニサキス症は人から人へうつりますか?
人から人へ感染する病気ではありません。
アニサキスの幼虫が寄生した魚介類を、生または加熱不十分な状態で食べることで発症します。
一度かかると、二度とかかりませんか?
一度発症しても免疫によって防げるわけではなく、再びアニサキスを取り込めば再発する可能性があります。
過去にじんま疹や呼吸困難を起こした方は、アレルギー反応にも注意が必要です。

