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脂質異常症

健康診断でコレステロールや中性脂肪の異常を指摘された場合は、症状がなくても動脈硬化のリスクを確認することが大切です。

脂質異常症は、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が高い、またはHDLコレステロールが低い状態です。

脂質は細胞膜やホルモンの材料、体を動かすエネルギー源として必要な成分です。しかし、血液中の脂質が多過ぎる状態が続くと、血管の壁にコレステロールがたまり、動脈硬化が進みやすくなります。

脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、健康診断の血液検査で初めて気づく方が少なくありません。放置すると、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患につながる可能性があります。健康診断で異常を指摘された場合は、数値だけでなく、血圧、血糖、喫煙、家族歴なども含めて総合的に評価することが重要です。

目次

脂質異常症とは

脂質異常症とは、血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪などの値が基準から外れた状態です。

以前は「高脂血症」と呼ばれていました。しかし、脂質異常症にはLDLコレステロールや中性脂肪が高い状態だけでなく、HDLコレステロールが低い状態も含まれるため、現在は脂質異常症という病名が用いられています。

項目内容
主な異常LDLコレステロールが高い、中性脂肪が高い、HDLコレステロールが低い
主な発見のきっかけ健康診断、人間ドック、ほかの病気の血液検査
自覚症状ほとんどないことが一般的です
主な原因食生活、肥満、運動不足、飲酒、遺伝、糖尿病など
主な検査血液検査、血圧測定、必要に応じて心電図や頸動脈超音波など
主な治療食事、運動、体重管理、禁煙、薬物療法
注意する病気心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、末梢動脈疾患など

コレステロールと中性脂肪の役割

コレステロールや中性脂肪は、すべてが体に悪いものではありません。体を維持するために必要な成分ですが、血液中で多過ぎたり少な過ぎたりすると問題になります。

脂質の種類主な役割と特徴
LDLコレステロール肝臓から全身へコレステロールを運びます。多過ぎると血管壁に蓄積しやすくなります
HDLコレステロール血管壁などに余ったコレステロールを肝臓へ戻す働きがあります
中性脂肪体を動かすエネルギー源として使われ、余った分は脂肪組織などに蓄えられます
non-HDLコレステロール総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値で、動脈硬化に関係する脂質をまとめて評価します

LDLコレステロール

LDLコレステロールは、一般に「悪玉コレステロール」と呼ばれています。

本来は細胞膜やホルモンの材料となるコレステロールを全身へ運ぶ役割があります。しかし、血液中に多い状態が続くと血管壁へ入り込み、動脈硬化を進める原因になります。

HDLコレステロール

HDLコレステロールは、一般に「善玉コレステロール」と呼ばれています。

血管壁などに余ったコレステロールを回収して肝臓へ戻す働きがあり、低い場合は動脈硬化のリスクが高くなる可能性があります。

中性脂肪

中性脂肪はトリグリセライドとも呼ばれ、体を動かすためのエネルギー源になります。

食べ過ぎ、飲酒、肥満、糖尿病などによって高くなりやすく、著しく高い場合は急性膵炎の原因になることもあります。


脂質異常症の診断基準

脂質異常症は、空腹時または随時の血液検査で評価します。

検査項目脂質異常症の基準
LDLコレステロール140mg/dL以上:高LDLコレステロール血症
LDLコレステロール120~139mg/dL:境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール40mg/dL未満:低HDLコレステロール血症
中性脂肪空腹時150mg/dL以上:高トリグリセライド血症
中性脂肪随時175mg/dL以上:高トリグリセライド血症
non-HDLコレステロール170mg/dL以上:高non-HDLコレステロール血症
non-HDLコレステロール150~169mg/dL:境界域高non-HDLコレステロール血症

これらは脂質異常症を見つけるための基準であり、薬を始める基準と同じではありません。治療が必要かどうか、どの程度まで数値を下げるかは、年齢、喫煙、糖尿病、高血圧、腎臓病、心筋梗塞や脳梗塞の既往などを踏まえて判断します。

総コレステロールだけでは判断しません

健康診断では総コレステロールが記載されることがありますが、総コレステロールだけでは動脈硬化のリスクを正確に評価できない場合があります。

HDLコレステロールが高いために総コレステロールが高くなっている方もいるため、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、non-HDLコレステロールを分けて確認します。


健康診断で脂質異常を指摘された方へ

健康診断で次のような記載があった場合は、検査結果を持参してご相談ください。

  • LDLコレステロールが高い
  • 悪玉コレステロールが高い
  • HDLコレステロールが低い
  • 善玉コレステロールが低い
  • 中性脂肪が高い
  • トリグリセライドが高い
  • non-HDLコレステロールが高い
  • 総コレステロールが高い
  • 要再検査、要受診、要精密検査と記載されている

過去の検査結果もお持ちください

確認する資料分かること
今回の健康診断結果どの脂質がどの程度異常か確認します
過去の健康診断結果一時的な変化か、長期間続いているかを確認します
血糖・HbA1c糖尿病や血糖異常との関係を評価します
血圧高血圧を含めた動脈硬化リスクを確認します
肝機能脂肪肝や飲酒との関係を調べます
腎機能慢性腎臓病の有無や薬の選択に役立てます
お薬手帳脂質に影響する薬や現在の治療を確認します

一度だけ高かった場合

食事、飲酒、体調、採血時間などによって、特に中性脂肪は変動します。

一度の異常だけで治療方針を決めるのではなく、必要に応じて空腹時に再検査を行います。ただし、LDLコレステロールが著しく高い場合や、家族に若くして心筋梗塞を起こした方がいる場合は、家族性高コレステロール血症も考えて早めに評価します。


脂質異常症の症状

脂質異常症は、数値が高くても自覚症状がほとんどありません。

頭痛、肩こり、めまいなどが脂質異常症の症状だと思われることがありますが、これらだけでコレステロールや中性脂肪の異常を判断することはできません。

状態主な特徴
自覚症状がない健康診断で初めて見つかることが多いです
動脈硬化が進んでいる胸痛、息切れ、手足のしびれなどが現れる場合があります
中性脂肪が著しく高い急性膵炎による強い上腹部痛などが起こることがあります
家族性高コレステロール血症アキレス腱の厚みや皮膚の黄色い隆起がみられることがあります

症状がないことは、動脈硬化が進んでいないことを意味しません。健康診断で異常を指摘された段階から、将来の心筋梗塞や脳梗塞を予防するための管理を始めることが大切です。


このような方はご相談ください

気になる状態確認したい理由
健康診断でLDLコレステロールが高い動脈硬化のリスクと治療の必要性を評価します
中性脂肪が高い食事、飲酒、糖尿病などとの関係を確認します
HDLコレステロールが低い喫煙、肥満、運動不足などを確認します
脂質の異常が数年間続いている長期的な動脈硬化リスクを評価します
食事や運動を続けても改善しない遺伝や病気、薬剤などの影響を確認します
家族に心筋梗塞や狭心症の方がいる家族性高コレステロール血症などを検討します
糖尿病や高血圧がある心血管リスクが重なるため、厳格な管理を検討します
腎機能低下を指摘されている慢性腎臓病を含めて治療方針を判断します
脂肪肝を指摘された中性脂肪や糖代謝との関係を確認します
薬を飲んでも数値が下がらない服薬状況や薬の組み合わせを見直します

速やかな受診が必要な症状

脂質異常症そのものは急な症状を起こしにくい病気ですが、動脈硬化性疾患や急性膵炎が発症すると緊急治療が必要になります。

  • 胸の痛みや圧迫感が続く
  • 胸の痛みが肩、腕、あごへ広がる
  • 突然息苦しくなった
  • 片側の手足が動かしにくい
  • 顔の片側がゆがんだ
  • ろれつが回らない
  • 突然、片方の目が見えにくくなった
  • 激しい上腹部痛が背中へ広がる
  • 上腹部痛と嘔吐を繰り返している
  • 冷や汗や意識の変化がある

胸痛や神経症状がある場合は、心筋梗塞や脳卒中の可能性があります。強い上腹部痛と嘔吐がある場合は、中性脂肪の著しい上昇による急性膵炎も考えられます。救急対応が可能な医療機関を速やかに受診してください。


脂質異常症の主な原因

脂質異常症は、食事や運動などの生活習慣だけでなく、遺伝、病気、薬剤などによっても起こります。

原因・背景脂質への影響
食べ過ぎ摂取エネルギーが多くなり、中性脂肪などが上がりやすくなります
飽和脂肪酸の取り過ぎLDLコレステロールが高くなる原因になります
糖質の取り過ぎ中性脂肪が高くなりやすくなります
飲酒中性脂肪や肝機能へ影響します
肥満LDLコレステロールや中性脂肪の異常と関係します
運動不足中性脂肪の上昇やHDLコレステロールの低下につながります
喫煙HDLコレステロールの低下や動脈硬化に関係します
遺伝家族性高コレステロール血症などがあります
糖尿病中性脂肪高値やHDLコレステロール低値を伴うことがあります
甲状腺疾患甲状腺機能低下症ではLDLコレステロールが上がる場合があります
腎臓病腎機能や尿蛋白の異常に伴って脂質が変化します
薬剤一部の薬によって脂質異常が起こる場合があります

LDLコレステロールが高くなる原因

LDLコレステロールが高くなる主な原因には、次のようなものがあります。

  • 肉の脂身やバターなど、飽和脂肪酸の多い食事
  • 肥満
  • 遺伝的な体質
  • 甲状腺機能低下症
  • ネフローゼ症候群などの腎臓病
  • 糖尿病
  • 閉経後のホルモン変化
  • 一部の薬剤

食生活を整えてもLDLコレステロールが大きく下がらない場合は、体質や病気が関係している可能性があります。


中性脂肪が高くなる原因

中性脂肪は、食事や飲酒の影響を受けやすい項目です。

関係する要因具体例
糖質の取り過ぎ菓子、清涼飲料水、果汁飲料、ご飯・麺類の食べ過ぎなど
飲酒ビール、日本酒、ワイン、焼酎など種類を問わず影響します
食べ過ぎ摂取エネルギーが消費量を上回る状態です
肥満内臓脂肪の増加と関係します
糖尿病血糖の管理不良によって中性脂肪が上昇します
運動不足エネルギー消費が少なくなります
遺伝家族性の高トリグリセライド血症などがあります
薬剤一部のステロイド薬やホルモン薬などが影響します

中性脂肪が高い場合は、脂っこい食事だけでなく、甘い飲み物、アルコール、主食や菓子類の量も確認します。


HDLコレステロールが低くなる原因

HDLコレステロールは、次のような要因によって低くなることがあります。

  • 喫煙
  • 肥満
  • 運動不足
  • 中性脂肪高値
  • 糖尿病
  • 遺伝的な体質
  • 一部の薬剤

HDLコレステロールだけを薬で上げることを目標にするのではなく、禁煙、運動、体重管理、中性脂肪やLDLコレステロールの管理を行います。


家族性高コレステロール血症

家族性高コレステロール血症は、生まれつきLDLコレステロールを血液中から取り込む仕組みに異常があり、若い頃からLDLコレステロールが高くなる遺伝性の病気です。

一般的な生活習慣による高コレステロール血症よりも早い時期から動脈硬化が進み、若くして狭心症や心筋梗塞を発症する可能性があります。

家族性高コレステロール血症を疑う特徴

  • 未治療のLDLコレステロールが著しく高い
  • 子どもの頃や若い頃からコレステロールが高い
  • アキレス腱が厚い
  • 手や肘、膝などに黄色い隆起がある
  • 家族にもLDLコレステロールが高い方がいる
  • 家族が若い年齢で心筋梗塞や狭心症を発症している
  • 食事や運動に取り組んでもLDLコレステロールが十分に下がらない

家族性高コレステロール血症では、生活習慣の改善だけで十分な管理が難しく、早い段階から薬物治療が必要になる場合があります。患者様本人だけでなく、血縁のあるご家族にも検査を勧めることがあります。


病気によって起こる脂質異常症

別の病気を背景として脂質異常が起こる状態を、続発性脂質異常症と呼びます。

関係する病気主な脂質の変化
糖尿病中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低くなる場合があります
甲状腺機能低下症LDLコレステロールが高くなることがあります
慢性腎臓病中性脂肪やLDLコレステロールなどが変化します
ネフローゼ症候群LDLコレステロールや中性脂肪が高くなります
胆汁うっ滞性肝疾患コレステロールが高くなる場合があります
肥満症中性脂肪高値、HDLコレステロール低値などを伴います
睡眠時無呼吸症候群肥満や代謝異常とともにみられることがあります

脂質異常症を診断した際は、血液検査や問診から、背景に治療が必要な病気がないか確認します。


脂質に影響する可能性がある薬

一部の薬は、LDLコレステロールや中性脂肪などに影響することがあります。

薬の種類主な影響
ステロイド薬LDLコレステロールや中性脂肪が上昇する場合があります
一部の利尿薬中性脂肪や血糖に影響することがあります
一部のβ遮断薬中性脂肪やHDLコレステロールへ影響する場合があります
女性ホルモン製剤種類や投与方法によって中性脂肪などが変化します
免疫抑制薬脂質や血糖へ影響することがあります
一部の抗精神病薬体重増加や脂質異常につながる場合があります
レチノイド製剤中性脂肪が上がることがあります

薬が原因と思われる場合でも、処方薬を自己判断で中止しないでください。服用を始めた時期と脂質の変化を確認し、必要に応じて処方医と相談します。


脂質異常症と動脈硬化

LDLコレステロールが血管壁にたまると、血管の内側にプラークと呼ばれる盛り上がりができます。

プラークが徐々に大きくなると血管が狭くなり、十分な血液を送れなくなります。また、プラークが破れると血栓ができ、血管が突然詰まることがあります。

血管が障害される場所起こる可能性がある病気
心臓の冠動脈狭心症、心筋梗塞
脳の血管脳梗塞、一過性脳虚血発作
首の頸動脈脳梗塞の原因となる動脈硬化
足の動脈末梢動脈疾患
大動脈大動脈瘤など
腎臓の血管腎機能低下や腎血管性高血圧

脂質異常症によるリスクは、脂質の数値だけで決まるものではありません。高血圧、糖尿病、喫煙、慢性腎臓病、年齢、家族歴などが重なるほど、動脈硬化性疾患の発症リスクが高くなります。


脂質異常症の検査・診断

脂質異常症の診療では、血液検査で脂質の値を確認するとともに、原因となる病気や動脈硬化のリスクを調べます。

問診で確認すること

確認する内容具体例
健康診断の結果LDL、HDL、中性脂肪、血糖、血圧など
過去の検査値いつから脂質異常が続いているか
食生活肉類、菓子、飲料、外食、夜食など
飲酒種類、量、頻度
運動運動の種類や頻度
喫煙本数、期間、禁煙歴
体重変化最近の増減や腹囲の変化
持病糖尿病、高血圧、腎臓病、甲状腺疾患など
服薬処方薬、市販薬、サプリメント
家族歴高コレステロール血症、心筋梗塞、脳卒中など

血液検査

検査項目主な目的
LDLコレステロール動脈硬化に関係するコレステロールを評価します
HDLコレステロールコレステロールを回収する働きに関係します
中性脂肪食事、飲酒、糖代謝などの影響を確認します
non-HDLコレステロール動脈硬化に関係する脂質をまとめて評価します
血糖・HbA1c糖尿病の有無を確認します
AST・ALT・γ-GTP脂肪肝や飲酒、薬の影響などを調べます
クレアチニン・eGFR腎機能を確認します
甲状腺機能甲状腺機能低下症などを調べます
CK筋肉の状態や脂質低下薬の副作用を確認する場合があります
尿酸高尿酸血症や代謝異常を確認します

空腹時採血と随時採血

中性脂肪は食事の影響を受けやすいため、以前は空腹時採血を中心に評価していました。

現在は随時採血の中性脂肪についても基準が設定されていますが、数値が高い場合や詳しい評価が必要な場合は、一定時間食事を控えて再検査することがあります。


動脈硬化を調べる検査

脂質異常症がある方すべてに同じ検査を行うわけではありません。

年齢、症状、脂質の値、糖尿病や高血圧の有無などに応じて、次の検査を検討します。

検査主な目的
血圧測定高血圧の有無を確認します
心電図不整脈や心筋虚血を疑う変化を確認します
頸動脈超音波首の動脈壁の厚みやプラークを観察します
ABI足の血流や末梢動脈疾患を評価します
心臓超音波心臓の動きや心肥大などを確認します
冠動脈CT冠動脈の狭窄や石灰化を詳しく調べます
頭部MRI・MRA脳や脳血管の異常を確認します

胸痛、息切れ、歩行時の足の痛みなどがある場合は、循環器内科や脳神経内科などへの紹介を検討します。


人間ドックについて

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脂質異常症の治療

脂質異常症の治療では、生活習慣を見直したうえで、動脈硬化のリスクに応じて薬物療法を行います。

治療内容
食事療法飽和脂肪酸、糖質、飲酒量などを見直します
運動療法有酸素運動や筋力トレーニングを取り入れます
体重管理肥満がある場合は無理のない減量を目指します
禁煙動脈硬化性疾患のリスクを減らします
血圧・血糖管理高血圧や糖尿病を同時に治療します
薬物療法LDLコレステロールや中性脂肪を下げる薬を使用します
原因疾患の治療甲状腺疾患や糖尿病などを治療します

治療目標は患者様によって異なります。心筋梗塞や狭心症を起こしたことがある方、糖尿病や慢性腎臓病がある方などでは、より低いLDLコレステロール値を目指す場合があります。


脂質異常症を改善する食事

脂質異常症の食事では、単に脂質をすべて減らすのではなく、どの脂質や食品を多く取っているかを確認します。

食事上のポイント具体的な工夫
肉の脂身を減らす脂身の少ない部位や鶏肉、魚などを選びます
バターや生クリームを控える使用量や頻度を調整します
魚を取り入れる肉料理に偏らないようにします
野菜・海藻・きのこを取る食物繊維を取り入れます
大豆製品を活用する豆腐、納豆、豆類などを組み合わせます
菓子類を減らす洋菓子、スナック菓子などの頻度を見直します
甘い飲み物を控える清涼飲料水や加糖コーヒーなどを減らします
主食の量を調整するご飯、パン、麺類の重ね食べを避けます
飲酒量を見直す特に中性脂肪が高い方は注意します
食べ過ぎを避ける適正なエネルギー量を意識します

食生活の改善は脂質異常症治療の基本です。特にLDLコレステロールが高い方では飽和脂肪酸を控え、中性脂肪が高い方では糖質やアルコールの取り過ぎを見直します。

コレステロールを含む食品は食べてはいけませんか?

卵や魚卵などにはコレステロールが含まれていますが、血液中のLDLコレステロールへの影響には個人差があります。

特定の食品を完全に禁止するのではなく、肉の脂身、バター、生クリームなどに多く含まれる飽和脂肪酸や、食事全体のバランスを確認します。

中性脂肪が高い方の食事

中性脂肪が高い方では、次の内容を見直します。

  • 甘い飲み物
  • 菓子類
  • 果汁飲料
  • アルコール
  • ご飯、パン、麺類の食べ過ぎ
  • 夜食
  • 一度に多量の食事
  • 運動不足

脂っこい食品だけを控えても、糖質や飲酒量が多いままでは中性脂肪が改善しにくい場合があります。


運動による改善

運動は中性脂肪の低下、HDLコレステロールの改善、体重管理、血糖や血圧の管理に役立ちます。

運動の種類具体例
有酸素運動ウォーキング、自転車、水泳、軽いジョギングなど
筋力トレーニングスクワット、かかと上げ、自重トレーニングなど
日常活動階段を使う、歩く時間を増やす、座る時間を減らすなど

運動は一度にまとめて行うだけでなく、日常生活の中で継続することが大切です。

運動を始める前に相談したほうがよい方

  • 胸痛や息切れがある
  • 心臓病や脳卒中の既往がある
  • 血圧が著しく高い
  • 糖尿病の合併症がある
  • 腎機能が低下している
  • 運動時に動悸やめまいが起こる
  • 関節や腰に強い痛みがある

最初から激しい運動を行う必要はありません。無理なく続けられる内容から始めます。


体重管理

肥満、特に内臓脂肪の増加は、中性脂肪高値、HDLコレステロール低値、糖尿病、高血圧などと関係します。

体重を減らす場合は、極端な食事制限ではなく、食事量と運動量を調整しながら緩やかな減量を目指します。

体重だけでなく、腹囲、血糖、血圧、肝機能などの変化も合わせて確認します。


飲酒と脂質異常症

アルコールは中性脂肪を上昇させる原因になります。

「糖質ゼロ」や「プリン体ゼロ」と表示された酒類であっても、アルコールそのものが中性脂肪や肝臓へ影響するため、量に注意が必要です。

診察では、次の内容を確認します。

  • お酒の種類
  • 1回に飲む量
  • 週に飲む日数
  • まとめ飲みの有無
  • 飲酒後の食事や夜食
  • 過去の飲酒量
  • 休肝日の有無

中性脂肪が著しく高い場合や急性膵炎のリスクがある場合は、禁酒を勧めることがあります。


喫煙と脂質異常症

喫煙はHDLコレステロールの低下や血管の炎症、血栓形成などに関係し、動脈硬化性疾患のリスクを高めます。

脂質異常症の治療では、数値を下げるだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞を予防することが目的です。そのため、喫煙している方には禁煙が重要です。


脂質異常症の薬物治療

生活習慣を改善しても目標値へ到達しない場合や、動脈硬化性疾患のリスクが高い場合は薬物療法を行います。

薬の種類主な働き
スタチン肝臓でのコレステロール合成を抑え、LDLコレステロールを下げます
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬小腸からのコレステロール吸収を抑えます
PCSK9阻害薬LDLコレステロールを血液中から取り込む働きを高めます
ATPクエン酸リアーゼ阻害薬肝臓でのコレステロール合成に関わる経路を抑えます
フィブラート系薬主に中性脂肪を下げます
選択的PPARαモジュレーター中性脂肪を下げ、脂質代謝を整えます
EPA製剤中性脂肪を下げる目的などで使用します
陰イオン交換樹脂胆汁酸の排泄を促し、LDLコレステロールを下げます

どの薬を使用するかは、脂質異常の種類、肝機能、腎機能、糖尿病、ほかの薬との組み合わせなどを踏まえて決定します。


スタチンによる治療

スタチンは、LDLコレステロールを下げるために広く使用されている薬です。

肝臓でコレステロールが作られる仕組みを抑え、血液中のLDLコレステロールを肝臓へ取り込みやすくします。

スタチンの主な副作用

  • 筋肉痛
  • 筋力低下
  • CKの上昇
  • 肝機能値の上昇
  • 消化器症状
  • 血糖値への影響

筋肉痛がある方すべてに重い副作用が起きているわけではありませんが、強い筋肉痛、力が入りにくい、尿の色が濃いなどの症状がある場合は、早めに医師へ連絡してください。

副作用が疑われる場合も、自己判断で長期間中止せず、薬の種類や量の変更についてご相談ください。


中性脂肪を下げる薬

中性脂肪が高い場合は、食事、飲酒、血糖、体重などを見直したうえで、必要に応じて薬を使用します。

フィブラート系薬や選択的PPARαモジュレーター、EPA製剤などが用いられます。

腎機能やほかの薬との組み合わせによって注意が必要な場合があるため、定期的に血液検査を行います。


薬を飲み始めたら一生続けますか?

脂質異常症の原因や動脈硬化のリスクによって異なります。

体重管理、食事、運動、節酒などによって数値が改善し、薬を減らせる方もいます。一方、家族性高コレステロール血症や、心筋梗塞・脳梗塞の再発予防では、長期的な薬物治療が必要になることがあります。

薬を飲んで数値が正常になった場合も、薬の効果によって下がっている可能性があります。自己判断で中止せず、血液検査の結果を確認しながら医師と相談してください。


脂質異常症を放置するとどうなりますか?

脂質異常症を放置しても、すぐに体調が悪くなるとは限りません。

しかし、長い年月をかけて動脈硬化が進み、血管が狭くなったり詰まったりする可能性があります。

起こる可能性がある病気内容
狭心症心臓の血流が不足し、運動時などに胸痛が起こります
心筋梗塞冠動脈が詰まり、心筋が壊死します
脳梗塞脳の血管が詰まり、まひや言語障害などが起こります
一過性脳虚血発作一時的なまひや言語障害などが現れます
末梢動脈疾患歩行時の足の痛みや冷感が起こります
大動脈瘤大動脈の壁が弱くなり、こぶ状に広がります
急性膵炎中性脂肪が著しく高い場合に発症することがあります

脂質異常症の治療は、検査値を正常に見せることだけが目的ではありません。心筋梗塞や脳梗塞などを予防し、健康な生活を長く続けることが重要です。


循環器内科・専門医療機関への紹介が必要なケース

次のような場合は、循環器内科、代謝内科、内分泌内科などへの紹介を検討します。

  • 胸痛や息切れがある
  • 心電図に異常がある
  • 心筋梗塞や狭心症の既往がある
  • 脳梗塞や一過性脳虚血発作の既往がある
  • LDLコレステロールが著しく高い
  • 家族性高コレステロール血症が疑われる
  • 複数の薬を使用しても目標値へ到達しない
  • 脂質低下薬による副作用が疑われる
  • 中性脂肪が著しく高い
  • 急性膵炎の既往がある
  • 動脈硬化を詳しく調べる必要がある
  • 遺伝学的検査や特殊な治療が必要

家族性高コレステロール血症が疑われる場合は、患者様だけでなく、ご家族の検査や治療についても専門医と連携します。


胃カメラや大腸カメラは必要ですか?

一般的な脂質異常症の診断や治療で、胃カメラや大腸カメラを行う必要はありません。

脂質異常症では、血液検査、血圧測定、尿検査、心電図などを中心に評価します。

ただし、次のような場合は脂質異常症とは別の目的で内視鏡検査を検討します。

  • 健康診断で便潜血陽性を指摘された
  • 血便や黒い便がある
  • 貧血がある
  • 胃痛や胸やけが続いている
  • 食欲不振や体重減少がある
  • 胃がん検診や大腸がん検診が必要
  • 脂質異常症の治療とは別に消化器疾患が疑われる

脂質異常症だけを理由に内視鏡検査を行うのではなく、症状や健康診断の結果に応じて必要な検査を選びます。


当院での脂質異常症の診療

当院では、健康診断でコレステロールや中性脂肪の異常を指摘された方について、今回と過去の検査結果、食生活、飲酒、運動、喫煙、家族歴などを確認します。

必要に応じて血液検査や尿検査、心電図などを行い、高血圧、糖尿病、脂肪肝、腎臓病なども含めて動脈硬化のリスクを評価します。

症状・検査結果当院での対応
健診で脂質異常を指摘された異常となった項目と過去からの変化を確認します
LDLコレステロールが高い動脈硬化リスクに応じて治療目標を検討します
中性脂肪が高い食事、飲酒、血糖、体重との関係を確認します
HDLコレステロールが低い喫煙、運動不足、肥満などを確認します
脂肪肝を伴っている肝機能や生活習慣病をまとめて管理します
糖尿病や高血圧がある心血管リスクを総合的に評価します
家族性高コレステロール血症が疑われる専門医療機関への紹介を検討します
胸痛や心電図異常がある循環器内科へ紹介します
薬の副作用が疑われる血液検査を行い、薬の種類や量を調整します
専門的な検査が必要患者様のご希望を伺い、適切な医療機関へつなげます

脂質の数値だけを下げるのではなく、血圧、血糖、体重、肝機能、腎機能、喫煙なども含め、心筋梗塞や脳梗塞を予防するための全身管理を行います。


脂質異常症についてのよくある質問

脂質異常症とはどのような病気ですか?

血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が高い、またはHDLコレステロールが低い状態です。

自覚症状はほとんどありませんが、長期間続くと動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞につながる可能性があります。

高脂血症と脂質異常症は違いますか?

現在は脂質異常症という名称が一般的です。

LDLコレステロールや中性脂肪が高い状態だけでなく、HDLコレステロールが低い状態も含むため、高脂血症から脂質異常症へ名称が変更されました。

LDLコレステロールはいくつから高いですか?

一般的には140mg/dL以上で高LDLコレステロール血症、120~139mg/dLで境界域高LDLコレステロール血症とされます。

ただし、心筋梗塞や脳梗塞の既往、糖尿病、高血圧、腎臓病などによって目標値は異なります。

中性脂肪はいくつから高いですか?

空腹時採血では150mg/dL以上、随時採血では175mg/dL以上が高トリグリセライド血症の基準です。

中性脂肪は食事や飲酒の影響を受けやすいため、必要に応じて空腹時に再検査します。

HDLコレステロールは高いほどよいですか?

HDLコレステロールが40mg/dL未満の場合は低HDLコレステロール血症に該当します。

ただし、数値が高ければ高いほどよいと単純に判断するものではありません。LDLコレステロールや中性脂肪、ほかのリスク因子と合わせて評価します。

コレステロールが高いと症状がありますか?

多くの場合、自覚症状はありません。

症状がないまま動脈硬化が進むことがあるため、健康診断や定期的な血液検査が重要です。

痩せていても脂質異常症になりますか?

なります。

遺伝的な体質、甲状腺疾患、糖尿病、腎臓病、閉経後の変化などが関係する場合があります。体重だけで脂質異常症の有無は判断できません。

食事に気をつけていてもLDLコレステロールが高いのはなぜですか?

体内のコレステロールは、食事から取り入れるだけでなく、肝臓でも作られます。

遺伝的な体質、家族性高コレステロール血症、甲状腺機能低下症などが関係している場合もあります。

卵は食べないほうがよいですか?

卵を一律に禁止する必要はありません。

摂取量や血液中のコレステロールへの反応には個人差があります。卵だけに注目するのではなく、肉の脂身、バター、菓子類などを含めた食事全体を見直します。

中性脂肪が高いときは脂っこいものを控えればよいですか?

脂質だけでなく、糖質とアルコールの取り過ぎにも注意が必要です。

甘い飲み物、菓子類、主食の食べ過ぎ、飲酒、夜食などが中性脂肪の上昇につながることがあります。

お酒をやめれば中性脂肪は下がりますか?

飲酒が主な原因であれば、減酒や禁酒によって改善する可能性があります。

ただし、肥満、糖尿病、食べ過ぎ、遺伝など、ほかの原因が重なっている場合もあります。

脂質異常症は運動で改善しますか?

運動は中性脂肪の低下、HDLコレステロールの改善、体重や血糖の管理に役立ちます。

LDLコレステロールへの効果には個人差があり、運動だけで十分に下がらない場合は食事療法や薬物療法を組み合わせます。

脂質異常症の薬は一生飲みますか?

患者様によって異なります。

生活習慣の改善で減量できる場合もありますが、家族性高コレステロール血症や動脈硬化性疾患の再発予防では、長期間の治療が必要になることがあります。

薬で数値が正常になったら中止してよいですか?

薬が効いて数値が下がっている可能性があるため、自己判断で中止しないでください。

服用をやめると再び上昇することがあります。定期的な血液検査を行いながら、医師と相談して調整します。

脂質異常症の薬で筋肉痛が起こることはありますか?

スタチンなどの脂質低下薬で、筋肉痛や筋力低下が現れる場合があります。

強い筋肉痛、力が入りにくい、尿が濃くなったといった症状がある場合は、早めに処方医へご相談ください。

家族性高コレステロール血症とは何ですか?

遺伝的な原因によって、若い頃からLDLコレステロールが高くなる病気です。

家族に若くして心筋梗塞を起こした方がいる、LDLコレステロールが著しく高い、アキレス腱が厚いといった場合は、詳しい評価が必要です。

脂質異常症では何科を受診すればよいですか?

まずは内科を受診してください。

胸痛や心疾患がある場合は循環器内科、家族性高コレステロール血症や特殊な脂質異常が疑われる場合は、代謝内科や脂質を専門とする医療機関へ紹介されることがあります。


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